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ものづくりが好きな塾講師のブログ

2015/02/04

@aksysaykさんから連絡をいただいて科学未来館へ行くことになった。

未来館へ行くのは2012年の冬にmaker faireで行ったきりだった。当初連絡をもらったとき、その場所と科学未来館が同一の場所だということがわからずにいたが、調べてあの場所だとわかるとやや遠さに滅入った。

中学受験が終わってからというもの、更に引きこもり癖が根深くなろうとしていたので外へ出ることにした。最近は家と塾との往復の日々だったし、また、街へ行くにしても東京の南側ばかりに出向いていたので良い機会となった。

当日の朝、七時半に目覚め、支度をする。外へ出てみると快晴で、カメラを持ってこなかったことを少し悔やむ。腰を壊してからというもの、カメラをあんまり持ち出さなくなった。この日のようにそれなりの距離を歩く日には敬遠するようになった。(椎間板ヘルニアっていうのはかなり私の生活にダメージを与えたんだと思う。)

@aksysaykさんとは新宿で待ち合わせることになった。新宿駅の一番線ホームでだ。埼京線の車両からこれでもかと言う人が溢れてくる。いつまで人間はこの扉から出続けるのだろうと思いながら眺めていた。人間は案外スポンジみたいなもので、狭い空間に押し込んでも押し込んでもまだまだ入るものなのだなあと思う。

彼女から連絡がきても、彼女が私を見つけてくれない限り会えないような気がしていた。一年前にも二人で会っているというのに見かけても彼女だと言う確信を持てないのではないかと思っていた。それは四年前に初めて会った時の印象と去年会った時の印象が大きく違っていたからで、それもそのはずで、初めて会った時の彼女は未だ10代だったはずだからだ。

でもその心配をよそに、ホームで彼女を見つけることが出来て安心する。

久しぶりに会う人にはその人の緊張の具合を量る。相手の歩調に合わせるように声のトーンもなるたけ合わせる。話題を少し頭の中に用意しておいて少しずつそれを放つ。特に不安はなかった。おそらく彼女も沈黙が平気なタイプだったから。

東京テレポート駅へ着くと更に空は広かった。人工島の上を二人で歩く。人はちらほらと見かけるけれど至って静かだ。

彼女はお腹が空いているらしいが、この島にあまりコンビニはない。御飯が取れる場所を調べておくべきだったと後悔する。未来館へ着き、お土産屋さんに行って食べ物を探してきたらと提案をする。私はその間に煙草を一本取り出して火を点けた。未来館の喫煙所はもっと違う場所にあるはずだったけれど、ここだったかなと疑問に思う。

この日の未来館ではチームラボによる「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」と言う特別展がひらかれていて、彼女はこれがお目当てであったようだ。私はメディア芸術コースを専攻しているのでまさにこのようなアートに接して大学生活を送っているせいもあり、そしてアートに対する背徳心のような最近の気持ちと相俟ってやや複雑な気分に陥った。

どの会場もプロジェクターによる投影で空間が作られていた。それなりの作品が作れればプロジェクターで拡大してその場を取り囲んでしまうことは難しい話ではないように思う。最近はあまりに拡大した映像の隅から隅まで映りこむプロジェクターのドットばかりが気になってしまい、例に漏れずこの日も気になって仕方がなかった。解像度の問題はまだまだ解消されないのだろうか。

机の上の映像も、壁に並べられた映像も、物体と映像の小さなズレや四角く区切られたドットばかりが目にいってしまって素直に楽しめない。美大に行かないほうがアートを楽しめたんじゃないかと思ってしまう。

そう、私はアートを楽しめなくなった。好きだった美術館も芸術祭もなんだか後ろ向きだ。最近は人に誘われるでもしないと足が向かなくなった。美大生とならばこうゆう場所へ行った方がいいと思われがちなのだろうか。美術館や芸術祭に接しなければと言う妙な義務感はあり、一人では足が向かないので、誘われることは嬉しいのだけれど、許容される場所へ行けば行くほど反抗したくなる幼い性を恨むばかりだ。

でも楽しそうにしている彼女を見ると安心した。不意に彼女の横顔が親友の面立ちと重なり、声を掛け間違えそうになる。なんだかこの日の私はその場にいながら別の空間に佇んでいるようで、何かが乖離しがちだった。

常設展へ足を進める。

社会化見学へ来た小学生達がマナーと言う言葉を知らないかのように振る舞っている。触れる展示物では触ってみたいと言う気持ちと潔癖性が葛藤していた。彼女と会えることは本当に嬉しかったしもっと楽しみたい。家からろくに出ずに公共の物から距離を置いていた最近の時間を恨んだ。もっと外へ出るべきであった、もっと公共の物に触れて慣れておくべきだった、たくさんの人たちに囲まれることに馴染んでおくべきであった。東京に暮らしておきながら不慣れを増やしてしまったことを本当に憎んだ。

仕事前に御飯をとっておきたかったこともあり、二時ごろ、彼女を未来館へ残して別れた。

前に会ったときのように喫茶店へ行けばよかったのかもしれない。もっとたくさんの話をしたかった、聞きたかった。

ゆりかもめに乗り、海と東京のガラクタみたいな街を見ながら溜息が出た。彼女に申し訳なかったと思う。声をかけてくれたこと、本当に嬉しかったのに。

 

結局私は反省を生かせず、昨日も今日も塾へ行くまで布団とこたつとを往復するだけだ。