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ものづくりが好きな塾講師のブログ

若葉台団地

横浜市の山の奥の方にある若葉台団地で三歳から六歳まで過ごした。最寄りの駅までバスで15分、ちょっと大きな駅まではバスで30分弱。都心に出ようと思ったらそこから電車で30分。世の横浜市のイメージとはかけ離れた奥地にある団地だった。
高校生の頃に一度、親父と遊びに行ったきり行ってなかったのだが、ふと先日思い立って若葉台団地へ行ってきた。

JR横浜線十日市場駅からバスに乗り込む。霧ヶ丘を抜けて若葉台団地を一周して若葉台中央に着いた。辺りは閑散としていた。築30年を超えた大きな建物が点在しており見下ろして来る。バスターミナルからわかばショッピングモールへと足を向けると日曜日なのにやはり静かだった。
幼稚園児から見た記憶の世界はすごく広かったのに、今見れば貧相でしょぼいショッピングモールだった。若葉台団地の中央に位置するイトーヨーカ堂だってあんまり大きくない。イトーヨーカ堂前の二階ロータリーでかけっこしていたのにやっぱりそんなに広くない。一階の広場もこぢんまりとしていて、誰が使うかわからない舞台があり、店の並びにはシャッターも目立った。店の前の水路はほとんど水が流れていないし、その先にあるじゃぶじゃぶ池も水はなくて、数人の子供たちが遊ぶだけ。近くにいた子に「ここはじゃぶじゃぶ池って今も呼ばれてる?」って聞くと「ううん」と返ってきた。夏になればまた水が張るのかなあ。
昔と変わらない場所にロッテリアがあって、食べた。近くにはコンビニもできていた。若葉台団地は中央のショッピングモール以外に店がないから、コンビニがやってきたのも最近みたい。イトーヨーカ堂が中央に鎮座してる町だからやっぱりセブンイレブンなんだなあ。
昔住んでいた20号棟まで来た。入り口は綺麗になっていて、郵便受けも新しい。怖い印象のあったエレベーターも最近のやつだ。でも暗い階段はそのままで、建物自体が変わったわけじゃない。親父の隣に座っていた時に事故に遭った駐車場も記憶よりやっぱり小さい。あ、でも建物は記憶くらいのサイズ感のままで、やっぱりどの建物も大きかった。ほぼ全ての建物のてっぺんにはペンギンのマスコットキャラがくっついていて、一丁目の建物には一匹、二丁目の建物には二匹…と言うようにくっついていることにこの時になって気付いた。そして長年、ペンギンだと思っていたキャラはフクロウだった。ちっともフクロウに見えなかった。
幼稚園に向かってみた。若葉台団地には車の入って来られない、徒歩と自転車用の緑道が張り巡らされていて、その道を辿って幼稚園まで向かう。トンネルを見て道を思い出した。徒歩と自転車用に二本に別れた道とトンネル、道の端にあるブロックの積まれたコンクリート塀。幼稚園の前で、迎えに来たお母さん達の長話が終わらなくて、皆塀の上に上り始めてジャンプして遊んでいたのだけど、怖がりだった私は足が竦んで、結局その塀から飛べなかったこと。記憶より塀はずっと低くて、でも、幼稚園児には高く思えそうだなって高さの塀だった。塀の脇の土は踏み固められていて、今も塀の上にのぼっている子達の存在を思わせた。
幼稚園の入り口に建てられたトーテムポールは色はちょっとカラフルになったけどそのままそこにいた。どうしてここにトーテムポールがあるのかわからないままだけどなんだか懐かしい。遊具もカラフルになれどちっとも変わってなくて校舎もそのまま。幼稚園が一番変わってないように思う。だけどやっぱり記憶上の校庭より狭い。
来た道を戻る。アンナちゃんと遊んだ丸太の組まれた遊具のある公園が見つからない。位置もろくに思い出せない。そのまま見つけられないままだった。
この一帯の緑地は不自然だった。団地の合間を縫うように作られた森が30年以上きちんと管理されて作られていた。団地の中に無理矢理押し込まれた自然の塊みたいだった。それが不自然を作っていた。

若葉台団地は一つの町になっている。イトーヨーカ堂をぐるりと取り囲むように住宅が建てられ、住宅の合間に作られた緑地がある。買い物も全て町の中で済む。遊ぶのも、自然に触れるのも。高校も大学も近くにあり、全ての生活を若葉台で完結できる。
ここで育ったままであったら、町はこうできていると当たり前に思って育つのかもしれない。高校まで文通を続けていた友人の家の表札はまだあった。ここで結婚して子供を持って、その子供も若葉台で育っていくのかな、と思った。
不思議な町だった。横浜とは思えない一つの区切られた世界だった。どうして両親はこの地で私を育て、弟を産もうと思ったのかな。

不思議な町で育ったのだと思う。今は高齢化が激しく、すれ違う人も五十を超えてると思われる人ばかりだった。私の住んでいた地区の小学校も老人ホームになってしまい、三つあった小学校、二つあった中学校はどちらも一つずつになっていた。階段ばかりだったショッピングモールにエレベーターが付いた。少しずつ衰えて老けていく町だけど、若葉台だけ世から少し浮いている気がした。